【開催報告】
初めて見た新井淳一の布の世界
能登一彦
何時の日だったか、以前にテレビで三宅一生・山本寛斎のファッションショーを観ました。その時のモデルの着ている生地に関心がありました。
私は小巾生地(絹糸使用)で着物を作る仕事に関係していましたので、広巾の生地に特に注目していました。
モデルさんは皆さん広巾の生地で製作された、光沢の有る硬質でも有り柔らかいミクロの世界をまとっている様子が画面から格好良く見えました。そこでどんな生地だろうかと思っていました。
そして今回、「第22回きもの文化塾」にて京都精華大学ギャラリーフロールで開催の「新井淳一の布/伝統と創生」展を見る機会を得ました。
会場となる京都精華大学の建物はユニークなデザインの建物で、それぞれの館の中の空間を使って作品を飾ってあったのが又良かったです。ギャラリーフロールの2階の部屋で初めにビデオを観ました。
まず以前に私の観た三宅一生のファッションショーが映り、次に工程が映り出されました。製造工程を知った私は思っていた物とは全く違い驚きました。そこの一室に作品「マワリテメグル」(経二重織)がありました。部屋半面に生地、カーテンが有り光が当てるとキラキラと光り光沢の有る宇宙の一空間にいる感覚になりました。
作品「プラクシス」(真空蒸気セット)は壁一面に白い布が立体(浮き出し)織りで重なるように張り付いて目を疑うばかりです。
作品「光輪」(絞り染め)は代表的な絞り染めで大胆かつ色彩(黒、朱、金、銀)が絞りによって放ち作品は目に焼きつきました。
作品「気根」(縮織)「樹根」(緯三重織)は一度織った布をもう一度根っこの部分だけほぐして見せて立体感を見せるすごく心が動く作品でした。
絹糸生地だったらどうなるだろうと思いました。
本館青階段吹抜けに作品「輝石」(絞り染め)は1階から5階までの吹抜けに生地が何かによって吹き上げられている感じがします。アルミニウムとナイロンの混合した風合いに絞り染めの色(白、青、緑、紺)が極めたつ上から見下ろすと染色と絞りの縮みのバランスで龍の様にも見えます。
情報館2階―3階教室にあった作品「銀の渦」(経編み)は階段天井一面に張って有り静寂を感じさせます。
作品「万華鏡」(絞り、メルトオフ、真空熱転写)の布はさまざまな形に変貌します。
※「真空蒸着」「真空熱写」「スリットヤーン」「メリトオフ」(溶解)などの技法と共に表されています。
感想
それぞれ素材を活かした織物(生地)をいかにして染、織りの仕方の表現ですばらしい作品として発表出来るのかと思いました。「美的造形性」私の思いの絞り染めで上げた地風味とはまったく違った感覚を覚えました。先生は布を人間の身体を包む「第二の皮膚」として捉えると言っておられますが、まさにその通りだと思います。また主催者は「布のマジシャン」の異名を持つテキスタルプランナーと表現しているところも共感しました。
(参考資料)会場内キャプション及び作品集
※写真右は、ご案内頂いた京都精華大学の小林昌夫先生
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